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2010年1月の記事

公的機関にリンクをはると

冒頭の「お知らせ」に掲示していた募金アピールをサイドバーに移しました。

ほとんど誰も気がつかないだろうけど、下の方には「子どもの権利条約」のバナーも貼らせてもらっています。
ユニセフのサイトで確認すると、リンクするにもいろいろ条件を出しておられて、曰く

>リンクしたことをメールでお知らせください
>その際、氏名、住所を記載してください
>ロゴマークを使用することはご遠慮ください
>無断で当協会の名義、写真を使用することはご遠慮ください
>当協会が貴ホームページと提携しているような印象を読者に与えないように表記にはご注意ください

さらに、

>貴ホームページの内容が以下のような場合、リンクをお断りする場合がございます。予めご了承ください。

その例として、

>子どもを攻撃の対象としたり、子どもに不適切な内容が含まれるとみなされる場合。
>子どもを性的に搾取しているような内容(画像、映像等を含む)、あるいはそのような行為を促すような内容が含まれる場合
>18歳未満の出会い系、18歳未満の閲覧できないコンテンツを含む場合。

と書かれています。

ちょうど「墓守虫」の第21回を掲載したところだったので、ひょっとしてクレームがつくかも、などと思いつつもお知らせのメールは送りました。

ほどなく、丁寧な(たぶん、定型の)お礼メールをいただきました。

どうやら、うちのサイトは健全だと認めていただけたようです。
(というか、本文読んでないでしょ、担当者さん)
「オレンジリボン」にリンクの連絡したときには、(社交辞令だと思うけど)「そのうち小説読ませてもらいます」と返事してくれてたよ。組織規模の違いでしょうけど。

公共の場で発言することや行動することには(たとえ本名をあかしていなくても)相応の責任が伴うと思いますが、そこで事なかれに萎縮するよりは、自分が良いと思える立ち位置をさがして試行錯誤していくほうがよいと考えています。

らす・きあ蛇足話その22 ハリアー

毎週日曜日の夜は、NHK総合の生物ドキュメンタリーをよく見ています。
先週のテーマは「チュウヒ」。
「鳥杜」で長田が滋につけたニックネーム(英語名ハリアーharrier)ですね。

湿原に住み、垂直離着陸や超低空低速飛行などの技を駆使する姿を「かっこいい〜〜」とにやけながら見ていました。
番組ではうれしいことに、ハヤブサ(ファルコン)もゲスト出演。高所から急降下襲撃する猛禽類の代表格として紹介されていました。

31日(日)深夜に再放送されるそうですが、うちはBS2なんて映りません。録画しときゃよかった。

番組の紹介

If we hold on together

他の人のブログで、動画サイトからの引用を埋め込み表示されているのを見て、自分でも試しにやってみようかな、と。

ふだんはネットで動画を見ることなんてあんまりないんですが、こんなふうに好きな歌詞の紹介をするときには便利ですね。
ところで歌詞や楽曲の引用って著作権上はどういう扱いなんでしょう。
あんまり知識がないのでちょっと不安。

ラス・キア 子守唄墓守虫(ララバイ・シデムシ) 第21回

 キアはじろりと室内を眺めわたして、不機嫌そうに腕を組んだ。
「烏丸に指一本でも触れてみい。どないなっても知らんで」
「そない怖い顔せいでも、俺ら穏便に話しあいたいだけや」
「ごたくはええ。さっさと終わらせろ」
「そう、せくなって」
 淡路に合図されて、また高井田がしゃしゃりでた。
「千林との勝負、どないや。勝ち目はありそうか」
「ああ」
「えらい自信やな。けど、全教科いうんはきついやろ。いくら頭ええゆうても最後は運や。気ぃぬいてついうっかりとか、なんぼでもありそうやな」
「そういうことにはならない。僕は最後まで手は抜かない」
 虚勢に虚勢ではりあった。
 本当は、この先の話をキアに聞かれると思っただけで頭がくらくらしていた。手遅れだ。後悔したってもう後戻りはできない。
 高井田は僕の余裕のなさに気づいているんだろうか。肩をいからせて低い声で威嚇してきた。
「烏丸ぁ。四月に俺らと約束したこと、けろっと忘れてもうたんやないか。最近ちいと態度でかいで、お前」
「あの時のは約束なんかじゃない。脅しだった」
 声が震えているのがばれているだろうか。
「脅されてびくついた僕がばかだった。でももうこれ以上我慢し続けるのはまっぴらだ」
「はあ?何えらそぶっとんねん。ちいと味方が増えた思うて、いい気になりよってよぉ」
 高井田はスラックスのポケットから最新機種の携帯電話をひっぱりだして待ち受け画面を開き、僕の前でみせびらかすように振り回した。
「ここに何がはいっとうか、お友達に教えたってもええんかなぁー」
 キアが何かを言おうとしたのに先んじて、僕はどなった。
「言われなくても、自分で説明する!」
 耳からはいった自分の声が頭の中でわんわんと反響した。
「入学してすぐに、こいつら僕の友達を恐喝(ゆす)ろうとしていた。止めにはいった僕だけがつかまって旧校舎にひきずりこまれた」
 崖から突き落とされるくらいなら、自分から飛び降りてやる。
「服を剥がれて素っ裸の写真を撮られた。それをネットに流すって脅されて……」
 声がうわずって、最後はほとんど悲鳴になった。
「土下座して許してくれって泣きわめいた。もう二度と逆らいませんって自分から言った……」
 高井田は唖然として僕を見ていたが、我に返ると自分が侮辱されたみたいに真っ赤になった
「何えらそうにくっちゃべっとんや、だぼかす、どマゾ、そないにいたぶられたいならやったろうやないか!」
「もういい!どうとでも好きにしろ!それでお前らが無事で済むと思うなよ!」
 一歩前へ出て指を突き立てた。高井田に。その後ろの淡路に。
「お前ら、自転車ドロで本署の刑事さんに目をつけられてるだろ。週刊誌の記者やTV局が刑事さんに張り付いてるの、知ってるか。僕の写真を公開するなら、全員実名でたれ込んでやる。校長も江坂も道づれにしてやるからな!」
「だぁまぁれええ、くそがき……」
 高井田が両手を振り上げて僕につかみかかろうとした。横から飛びこんできたキアが、その手をつかみ、勢いにのせてひるがえした。
 高井田の身体が宙に浮いた。背後の椅子に落下してもろともに転がった。携帯電話が机の脚にぶつかってはねとんだ。
「やりぁがったな!」
 茨木が血相を変えてキアに飛びかかった。キアは身を沈めた位置から茨木のむこう脛めがけて蹴りを放った。
 よたついた茨木は反対側からつっこんできた淡路にぶつかった。キアは二人の間をかいくぐって前転し、高井田の携帯に手を伸ばした。
 一瞬早く、携帯を拾い上げたやつがいた。
「ええかげんにせえよ。誰が先に手ぇ出せ言うた」
 売布が冷ややかな目で周囲の惨状を見渡していた。
 転びかけて机にしがみついた淡路とその足元に手をついた茨木、背中をまるめてうずくまっている高井田。
 キアは僕に背を向けたまま、売布を警戒しながらゆっくりと立ち上がった。
「自分の身ぃ守る気もないアホ共にまじでつっかかるやつがおるかよ」
 売布は抑揚のない低い声でつぶやくように言った。
「自爆テロにはまんのは勝手や。けど、えーさんに迷惑かけたらどないなるか、わかっとうな」
 そうして両手でつかんだ携帯をぐるっとねじった。ヒンジがべきべきと音をたてて割れ、ちぎれた機体の端から細い電線が臓腑のように垂れ下がった。
 高井田が獣のようにうなったが、抗議のことばにはならなかった。
 売布は機械の残骸をぽとりと床に落とし、液晶画面をつま先で踏みにじった。
「淡路」
 いきなり呼びかけられて、巨体がびん、と直立した。
「そいつら連れて部屋に来い」
 足音もたてずに教室を出て行った売布のあとを他の連中がどたどたと追いかけた。
 高井田は振り向いて僕に悪態をつこうとしたが、茨木に襟をつかまれてひきずっていかれた。
 教室の後ろにかたまっていた一年生達は、騒ぎに乗じてとうに姿を消していた。
 急にがらんとした室内で、キアがとうとう振り向いた。
 目があうより先に顔をそむけて鞄をつかみ、逃げるように教室から走り出た。
「ラス!」
 追いかけられているのはわかっていたが、足も止めずにまっすぐ校舎の出口を目指した。
 重い扉を押しあけて外へ出た途端に、横殴りの風と雨に押されて身体が傾いた。
「ラス!」
 傘もささずに駆け出して、数メートル行ったところでコンクリートの路面を流れる水に足をとられた。グラウンドに転げ落ちて泥んこの水たまりに片膝をつっこんだ。後ろから助け起こそうとしたキアの手をはねのけた。
「ひとりで帰る……」
「あほ!」
 キアは僕の両腕をつかんで校舎までひきずって戻った。
 小柄な身体のどこからこんな力がだせるのか。僕らがくぐり抜けたひょうしに扉がきしみながら閉まり、風雨の音がすっと遠のいた。
 僕はキアの両手に押さえられ、壁に背をはりつけて肩で息をしていた。
 真正面で大きく見開かれたキアの目に小さな人影が映っていた。
 ぐしゃぐしゃの髪から水滴をしたたらせ、泥はねのついた顔を震わせている貧相な子供。
 これが周りに見られている僕の姿か。
 そう思うと、ひとりでに笑いがこみあげてきた。
 こんなコバエが一匹、はたき落とされたところで誰も気にしない。世間は何も変わらないだろう。
「ラス……」
「大丈夫。正気だよ」
 くすくす笑いを深呼吸でおさめ、キアの手をそっとひき離した。自分の足でなんとかまっすぐに立った。
「大丈夫。明日からが本番なんだから。ここで逃げ出したりはしない」
「……びしょびしょやで」
 そう言うキアのシャツもべったりと胸にはりついていた。
「この暑さだもの。風邪なんかひかないよ。でも、濡れたまま帰るわけにもいかないかな」
 僕はキアについてくるよう合図して、保健室に向かった。
 壬生先生は帰宅したらしく、灯りの消えた保健室はドアも窓も施錠されていた。僕は部屋の前の机に置かれた「ご意見箱」をひっくりかえし、ナンバーキーを解除して箱の中に手をつっこんだ。紙切れをかきわけて真鍮の鍵をとりだし、それを使って保健室のドアを開けた。
 キアは狐につままれたような顔をしながら、僕について部屋に入った。
「壬生先生は非常用シェルターのつもりなんだ。知ってる生徒は二、三人かな。他の先生には内緒だよ」

アルバムをつくりました

 ODENさんから「玉子焼き」のイラストをいただきました。
 下書きからさらに磨きがかかって、登場人物たちの個性が生き生きと表現されています。
 これを機会に、今までサイト運営と小説執筆のために撮影してきた写真も公開してみようと思います。
 芸術性などかけらもない写真ばかりですが、小説世界をイメージしていただくのに少しは足しになるかもしれません。
 ブログの右サイドバーからアルバムに行けますので、お暇なときにどうぞ。
 

バランス感覚

 昨年暮れから1月前半にかけて、公私ともにいろいろなことがありました。

 体調を崩したり、仕事でミソをつけたりつけられたり、家族の人生の節目だったり。
 それでなくても1月17日前後は落ち着かないのに、ハイチ地震のニュースまで重なったし。
 リアルやネットでのお友達付き合いにはずいぶんと助けていただきました。

 たまたま連載のほうも痛い展開で書くのに難渋していたのですが、お笑いやパロディーでうまいことバランスがとれたかな、という結果報告です。
 もちろん、お遊び創作だからといって手抜きや妥協はいたしません。
 おふざけにも今できる範囲でベストをつくしているつもりです。

らす・きあ蛇足話その21 イラスト!

 短編小説を書かせていただいたご縁で、ODENさんが作品のイラストを制作してくださっています。
 サイトの日記コーナーで制作過程を公開してくださっているのですが、これがとても素敵なんです。
 主役のミカさんはちゃんと玉子焼きを食べてくれてますし、滋がかっこいい!長田がかわいい!聡がボケてる!左端先生、もっと大きく描いてあげてください!などと、ひとりで盛り上がっています。
 自分の頭の中で生まれた子供たちを他の方が絵姿にしてくださる。なんだか不思議で面はゆい体験です。
 本編のほうは中盤の山場。うっとうしい展開が続いていますが、もう少しして夏が来たら、イラストに負けない、はつらつとしたラス・キアをお見せしたいです。

ラス・キア 子守唄墓守虫(ララバイ・シデムシ) 第20回

「ラース、ラスラス」
 もう、反論するのもばかばかしくなった。
「わん!」
 一声ほえて噛みつくまねをした。キアは傘からひょいと離れて笑いながら駆けだした。
 僕ら二人はじゃれるように追いかけっこをしながら裏門をくぐった。


2003/06/24 Tue.

 朝のうち、どんよりと曇っていた空から昼過ぎには雨が降り出した。
 今朝は寝坊して、金魚水槽用の汲み置きバケツをベランダに出しっぱなしにしてきてしまった。
 ちゃんと蓋をしたかどうかも思い出せない。
 急いで家に帰りたかったが、住之江の復習につきあってやらなくてはならない。
 僕がいつもよりイライラしているのを感じ取ってか、住之江もいつも以上に自信なさげで、鉛筆を運ぶ手も止まりがちだった。
 帰り支度をすませたキアは、教室の時計を気にしながらも、机をはさんで差し向かいに座った僕らから目を離せないでいた。
「そりゃあ、カッコを全部はずしてから移項しても間違いじゃないけどさ」
 同じ説明を何度繰り返しただろう。僕はうんざりしながら鉛筆の尻で机を叩いた。
「どっちの辺にも三の倍数がくっついているなら、そこを先に消しちゃったほうが手間がかからないだろ」
 住之江は背をまるめて上目遣いに僕を見た。
「三問目、それでまちがえた」
「あれは二と五だったじゃないか。約せない数字まで消しちゃだめだ」
「……」
「わかったよ。区別がつかないってんなら、全部先にばらしちゃえよ。そのかわり、計算まちがいが増えても知らないぞ」
 住之江は今にも泣き出しそうなふくれっ面になった。
 やおら立ち上がって鞄をつかむと、一目散に教室を飛び出していってしまった。
 はずみで消しゴムが机から転がり落ちて跳ねとんだ。教科書もノートもひろげたままだ。
 びっくりして腰を浮かした僕をキアが引き留めた。
「もう、堪忍したれよ」
「でも……」
「俺と違うて、あいつはこのあと塾に行って、帰ったら宿題すむまで寝かしてもらわれへん。お前と一緒におりとうて我慢しよったけど、もう限界やろ」
 頭からすっと血の気がひいた。キアにはそんなふうに見えていたのか。
 休み時間になるとキアにすりよって好きなことをしゃべっていた。僕がさそうまでひとりで弁当を食べていた。授業がはじまって十分もたつと、ぼんやりと窓の外を見ていた。僕がしてきたことは、住之江の貴重な息抜きを奪って頭を混乱させるだけだったのだろうか。
「……僕、住之江くんに嫌われちゃったかな」
「お前が嫌いなんやない。自分が情けないんや。何度教えられてもわからへん、お世話してもうてんのに結果がだせへんゆうんがどんな気持ちか、お前にわかるか?」
 僕は首を横に振った。自分の計画が住之江にそこまで負担をかけるとは思っていなかった。それを言うなら、キアだって僕の身勝手をどれだけ我慢してくれていたのだろう。
 何も言えなくなった僕の背中を軽く叩いて、キアはさきに教室を出て行った。

 住之江の残した学用品をひとりで片づけて校舎を出た。そぼ降る雨のなか、校庭ではサッカー部員が泥んこになって走りまわっていた。正門を出てしばらく歩いたところで僕のこうもり傘の下に薄桃色の傘がそっとはいりこんできた。
 大宮だった。
「去年、兄が受けた期末の問題。役にたつかしら」
 手渡された大判の封筒はきっちりとビニール袋に包み込まれていて、ずしりと持ち重りがした。中身は問題用紙だけではなさそうだ。なんでここまでサービスしてくれるのか不思議だったけど、ありがたいことは確かだ。
「すごく助かるよ。僕、クラブに入ってないから、過去問をどこから手に入れようかと悩んでたんだ」
 大宮はほっとしたように微笑んだ。けれどもその顔はまだちょっぴり気になることが残っているようにみえた。
「こないだの宣戦布告にはびっくりしたわ。烏丸くんて、人と違うことしてめだつのが怖くないん?」
「ちょっと前までは遠慮してたつもりなんだけどね。いい加減、いやになっちゃった。ずっと周りにあわせてるなんて、どのみち僕には無理だったんだ」
「でも気ぃつけてね。今度のこと、おもしろがってる人たちだけやないから」
「大宮こそ、僕と一緒のとこを誰かに見られないように気をつけろよ。とばっちりくらうのもばからしいだろ」
 今度はなんだか泣きそうな笑顔になった。
「お邪魔にならへんようにするね」
 そうして小走りに僕を追い抜いて帰っていった。
 僕は立ち止まって傘をぐるりと廻した。大宮の気に障るようなことを言っただろうか。味方してくれるのはうれしいけど、巻き添えをくうのがこわくないんだろうか。
 誰が見ても最近の千林はせっぱつまった状況だ。高井田があっちに賭けているなら、きっと僕をつぶす機会をうかがっているはずだ。


2003/07/08 Tue.

「日直かわってくれよ」
 朝一番に三国に頼まれて引き受けてしまってから気がついた。
 明日から期末考査が始まる。
 Dデイは今日か。
 けっこうだ。僕だって早いとこけりをつけたいと思っていたのだ。
 僕は六限の終了後、なにげないふりをしてキアに手書きのレポート用紙を手渡した。
「数学の予想問題。今日はこれだけ家で復習しといてよ」
 キアはもの問いたげに僕を見た。
「さきに帰ってて。日直の用事が手間取りそうだから」
 あいつらはきっと、四月の一件を蒸し返してくるだろう。転校してくる前のことでキアをわずらわせたくはない。

 朝のTVでは日本海側を通過する低気圧が梅雨前線を刺激していると言っていた。窓をたたく雨粒の音はどんどん大きくなってうるさいほどだ。校庭のサクラの木もざわざわと枝を揺らしていた。大雨強風注意報が発令されたとあって、ほとんどの生徒たちはそそくさと帰宅していった。
 僕が学級日誌を職員室に届けて戻ってきた頃には、教室には数名の生徒しか残っていなかった。
 このタイミングを待っていたのだろう。鞄をもちあげた僕に高井田がすり寄ってきた。
「ちょっと顔かせよ、カア公」
「いやだ」
 立ち上がって振り向いた時にはもう、三国と淡路、茨木に囲まれていた。
「ちょっとくらい、ええやろ。俺らの部室につきあえ」
「いやだ。話があるなら、ここですませたらいい」
 なおも言いつのろうとした高井田を制して、淡路が思わせぶりに嗤った。
「好きにさしたれ。せっかく内々の話にしたろ思うたのに、よっぽど人前で恥かきたいようやしな」
 僕を取り囲んだ連中は、誰も手を出してくるそぶりを見せなかった。
 ここで僕が無理矢理包囲を突破して帰ろうとしたら、先に暴力をふるってきたと難癖をつけるつもりだろう。以前、キアにちょっかいをかけた時とは違って、あらかじめ指示をだしているやつがいるのだ。
 教室にいた他の一年生たちは、こそこそと後部の出入口に向かおうとしていた。
 茨木が偉そうに言いはなった。
「なんも怖がるこたないやろ。お前ら、出て行かんでもええねんで」
 そこから動くなと言われたも同然だ。
 生徒たちは教室の隅に身を寄せ合って縮こまった。
 そこへ、ふたりの男子生徒がのっそりと入室してきた。
 門真と……。
 なんで……キアが……。
 今まで平静を装っていたのに、膝ががくがくと震えだした。
 淡路は明らかに僕の動揺を楽しんでいた。
「ひとりやったら心細いやろ思うてな。お友達を連れてきたったで」

番外編を掲載しました

リンクをさせていただいた、おでんさんの4コママンガがとても気に入ってしまって、ファンレターがわりに登場人物相互乗り入れのセルフパロディ小説をプレゼントしました。

おでんさんがこれをとても評価してくださって「発表しないのはもったいない」とまで言ってくださったので、別館のほうに掲載させていただきました。

タイトルは「空飛ぶ玉子焼きの伝説」です。

お気楽なコメディですので、目くじら立てずにお楽しみください。

リンクさせていただきました

 ここしばらく、私が訪問して作品を楽しませていただいたサイトさまと、リンクさせていただきました。

「ねごとや」  tokuさんのオリジナル小説と楽しいブログのサイトです。「13号ちゃんプロジェクト」は仮面ライダーファンにはうれしいアクション超大作シリーズ。「ナカのヒト」は壮大な時空を舞台にしたSF超大作です。ワンコさんニャンコさんがたくさん登場するのもうれしいところです。

「ODEN's Gallary」 気鋭の絵師、おでんさんのイラストと4コママンガのサイト。キュートな女の子のイラストがたくさんあります。「ミカさん」シリーズは元気な天使と健気な悪魔が活躍する、ちょっとひねったギャグマンガです

らす・きあ蛇足話その20 男コンビ

 ある読者さんが「男コンビ主人公の小説は珍しい」とおっしゃっていました。
 そこで私がどこからこういうネタを拾ってきたのだろうと、つらつら思い浮かべてみました。

 神話世界なら「ギルガメシュとエンキドウ」とか、「カレワラ」の「ワイナミョイネンとイルマリネン」ですね。
 外国の小説なら「トム・ソーヤーとハックルベリー・フィン」、「指輪物語」の「フロドとサム」あるいは「レゴラスとギムリ」
 日本の小説なら、陰陽師の「安倍晴明と源博雅」
 映画なら「ブルース・ブラザーズ」「メン・イン・ブラック」
 TVドラマなら「スタスキーとハッチ」
 マンガなら「うしおととら」、「アクマくん」シリーズの「アムカと志郎」、「トライガン」の「ヴァッシュとニコラス」

 こうしてみると、男女ペアが二人だけの世界に閉じていくのに対し、男コンビは他の人たちをまきこんで外向きに発展していく、と感じたのですが、いかがなものでしょう?
 

フライング

「墓守虫」の連載は毎週火曜日と決めていたはずなのに、うっかりして第19回を10日の日曜日にアップロードしてしまいました。
本日、第20回が読めるかも、と期待された方、もうしわけありません。

正月休みぼけと4日から始まった仕事上のごたごたと三連休。
立て続けにいろいろあって精神的体力ポイントが落ち込んでいたせいかもしれませんが、そそっかしいことこの上ありません。

さて、来週からはまた火曜日に戻しましょうか。
月曜日にくりあげてもいいかな、という気持ちもあるのですが。

ラス・キア 子守唄墓守虫(ララバイ・シデムシ) 第19回

2003/06/18 Wed.

 休み時間、机につっぷして目を閉じていると、からかうような澄んだ声が降ってきた。
「常磐があんたの勝負にTOTOを張ってるわ。オッズを再検討しないと場が成立しなくなりそうだけどね」
 頭を少しねじって片眼を開けた。御影がすまし顔で僕を見下ろしていた。
「……どういうこと?」
「中間考査の成績から、倍率三くらいであっちが有利って見たてたみたいなんだけど」
「……こないだは手抜きしたもんな……」
「数学の追試の結果が出てから、あんたの株があがってるの。西小時代の成績情報も流れてるし」
「その情報源ってお前じゃないの?」
「あんたに張るつもりなら黙ってるほうがお得でしょうけどね。私は賭け事なんてバカなまねには乗りませんよーだ」
 賭ける気はなくても周囲の動きを楽しんでるんだろ。
 ますます頭が重くなってきた。
 千林に公然と挑戦状をたたきつけたのは、あいつが逃げるのを牽制してフェアな勝負に持ち込みたかったからだ。他の連中が悪のりしてくるとまでは予想していなかった。
 これはちょっとやばいかもしれない。金品が動くとなると余計な連中がうごめきだす。
 一応、情報提供のお礼を言おうと思ったが、僕がのろのろと身体をおこした時には御影はもう自席にもどってしまっていた。


2003/06/20 Fri.

 膝にひろげたノートにぽつんとしみがついた。
 空を見上げた僕の額にもぽつんと水滴があたった。と思ったら、あっという間にさわさわと雨が降り出した。
 僕と葺合はあたりに散らばった学用品をかき集めて抱きかかえ、祠の軒に避難した。
「本格的に梅雨入りしちゃったな。もうここでは特訓を続けられないなあ」
 狭くて低い軒下ではふたりが腰をかがめて雨宿りするのがせいいっぱいだ。青池のほとりには他に屋根と呼べるものはない。
「……教室に行くしかないか」
「気乗りせん顔やな」
「ちょっと事態が過熱しちゃってる気がするんだ。これ以上、学校で目立ちたくない」
 荷物を鞄にまとめて折り畳み傘をひらいた。二人並んで片方ずつの肩を濡らしながら歩き出した。
 どこからかドクダミの匂いがただよってきた。
「高井田は千林に勝たしたいみたいやで」
「クラスのなかでごたごたするくらいは仕方ないと思ってた。でも、あいつらがあんまりバカなことを始めたら、先生より先に上級生が出てきそうだ」
「旧校舎におるアホ共な。自分らは特別みたいな顔しよって。先コも腰がひけよんのは、なんでや?」
「……噂話しか知らないけど」
 こんな話を今したものかどうか。躊躇した僕を葺合が目で促した。
 僕は傘ごしに周囲を見まわし、声をひそめた。
「今の校長さ、うちへ来て二年、あと一年で定年なんだけど、今まで二年おきくらいに学校を替わってきたそうなんだ。その理由っていうのが……いつもオンナ絡みなんだってさ」
「……」
「カメラ隠し持って本屋うろついてたとか、女子更衣室にはいりこんでたとか、若い女の先生を指導に呼んでどうとか、PTAとの飲み会でごちゃごちゃとか。そんなことがあるたびにノシつけて追い払われてる、みたいな」
「なんでクビにならん」
「親戚に教育委員会の偉い人がいるから。噂だよ。誰も本当だとは言わない」
 葺合はばかにしたように肩をすくめた。
「江坂のほうは自分のバックを適当にひけらかしてる。親父さんが神出市じゃ有名なソープランドチェーンのオーナーなんだって。二号さんの子だから名字は違うけど……」
「萩筋の出戸(でと)か!」
 いきなり固有名詞を出されて、僕のほうがびっくりした。
「知ってる人なの?」
 葺合はげんなりした顔になって鼻の頭をかいた。
「売布に面が割れとったんは、そんでか」
 気になる発言だったが、それ以上のことは話してくれそうになかった。
「で、エロ校長と出戸のおっさんがどこでつながるんや」
「この先は噂も噂。誰かの作り話じゃないかって思うんだけどね。新任祝いで酔っぱらった校長が勢いで新しい部下をひきつれてオンナ遊びに行った先で、自校の生徒とばったり出会った。お前こんなとこで何してる。親父の家やけど、先生、客か……」
 葺合が噴きだした。まったくたちの悪い冗談だ。
「きっかけはそこまでばかな話じゃないんだろうけど、江坂と校長のなれ合いは事実だよ。校長は定年まで、これ以上のスキャンダルはおこしたくない。江坂は校内のろくでなしを牛耳って適当に揚がりをせしめている。警察沙汰にならない程度にね」
「けど烏丸、えらい詳しいな。お前、こういう噂には興味ないほうやと思うてたけど」
 僕は口をつぐんだ。ちょっとしゃべりすぎてしまったかもしれない。

 しばらくは二人とも黙ってあぜ道を歩き続けた。
 雨に濡れた木々は元気いっぱいに枝をのばし、道端の雑草もつやつやした葉っぱを茂らせ、なかには小さな花を咲かせているものもあった。
 長居でなくても、こんな日は学校に行くのが億劫になる。
 人間はどうして草木みたいに黙って自分の領分だけを守っていることができないんだろう。
「……葺合くんが転校してきてからさ。僕、自分の気にしていたことがばかばかしくなっちゃったんだ。こんなせせこましい学校の中でおきることに、どれほどの意味があるんだろうってさ……」
 またしばらく沈黙が流れた。
 葺合は道端で鈴なりの小花を咲かせている丈の高い雑草に手をのばして、ぽきりと折りとった。ごわごわした葉と一緒にくるりと皮をむしって髄を噛みしめ、唇をすぼめた。
「すぅ……」
「スカンポはすっぱいもんだろ」
「スイスイや」
「僕が小さい頃はスカンポって言ってた。和名はスイバ。漢語ではサンモ。英語ならソレル」
「ややこいわ。そんなに名前があったらわけわからん」
「学名はよそ行きの名前。みんなが共通で使う名前がないと困るからね。でも、近所の人どうしで使う名前はいろいろあっていいんじゃない?」
 明智でも常浜でも、子ども達は昔からスイバを折って口にいれてきた。仲間内で通じる名前は遊びの一部だ。スカンポ。スイスイ。スイド。スッパグサ。
「身近なものや大事なものほど、特別に呼び名をつけたくなるんじゃないかな、人間ってさ」
「ふうん……」
 葺合はちょっとの間ちぎった葉を指先でもてあそんでいたが、やおら振り返って僕にぐいと顔を近づけた。
「おい。烏丸。俺に名前つけろ」
 薄緑に染まった指で自分の胸を指した。
「え?え……でも葺合くんは……滋くんで……」
 僕は思わずあとじさった。
「いちいち『ふ・き・あ・い」に『くん』づけされて、長ったらしいてかなわん」
「呼び捨てにしろって?『滋』でいい?」
「それは親の使う名前やろが。お前だけが使う名前、もっとちゃうの、つけろ」
「そんな……」
「ええから、はよせえ」
「そんな無茶な……きあ……」
「ああ、それでええ。キア、な」
 僕はぽかんと口をあけて葺合を見た。
 しどろもどろになって舌がもつれたので、葺合の「ふ」がちゃんと言えなかっただけなのに。
 相手はすっかりその気になってしまっている。
「……キア……」
 短すぎて、なんだか頼りない。
「俺がキアなら、烏丸はラス、やな」
「ええー。何それ。まるで犬じゃない」
 葺合は……キアは聞く耳持たなかった。
 緑色の穂を伸ばしたばかりのエノコログサを一本引き抜いて僕の目の前でちゃらちゃらと振りまわした。

掲示板を設置しました

完結した作品を掲載している別館(サイト)のほうに、掲示板を設置しました。

今までなかったのが不自然だったかもしれません。
私なりに慎重になっていた理由はあります。
メールやコメントであれば宛先は私ひとりということでそれなりに対応させていただけると思うのですが、掲示板だと書き込んでくださる内容が不特定多数の人の目に触れるため、みなさんに不都合や不愉快なことがないように運営できるのだろうか、という心配。
けどまあ、最近のアクセス数を見る限りではそこまで神経質にならなくてもいいかな、と考えました。
なにより、メールを書くほどじゃないけどちょっとひとこと言いたい、という方もおられるだろうということで。
(誰もいなかったらどうしよう?)
どうぞお気軽にご利用ください。

らす・きあ蛇足話その19 あれから7年

 今年は2010年。「墓守虫」は2003年の物語なので、もう7年も前のことになってしまいました。
 この7年間にも都市郊外の開発はどんどんすすんでいます。水田や畑がいつのまにかなくなってマンションが建っていたり、林に囲まれていた池の周囲がコンクリートで固められて、駐輪場になっていたり。アスファルトを敷き詰められたなかに小さなお宮さんがぽつんと取り残されているのはなんだか寂しそうです。
 マムシやムカデが減ったことを喜ぶ人もいるけど、カエルやトンボも減ってしまってヤブ蚊が大繁殖しています。イノシシやタヌキがいなくなったかわりにアライグマやヌートリアが出没するのはいかがなものでしょうか。
 人間がたくさん住むところには保護するほどの自然なんかないと思っている人もいるかもしれませんが、身近な環境は着実に変化しています。
 記憶に残る限りの2000年代の風景をどこかに書きとめておけたら、なんてことも考えています。

ラス・キア 子守唄墓守虫(ララバイ・シデムシ) 第18回

 僕は赤ペンでバッテンをいれられた答案の上に、青のマーカーでさらにチェックをいれていった。
「葺合くん、かけ算の九九、うろ覚えだろ」
「……えっ……ちょっ……」
「単純な計算問題なのに、まちがってるとこはほとんど同じパターンだ。七の段と九の段が一番怪しいな」
 葺合は目を白黒させながら口を開き、何も言えずにまた閉じた。
「小学生の時、転校か欠席か何かでちゃんと教えてもらえなかったんだろ。頭のできのせいじゃないよ」
「おおきなお世話や!なんでお前にそないなことで……」
「僕の計画のためだ。協力するって言っただろ」
 葺合の目をまっすぐに見据えた。からかっているわけでも嘲笑しているわけでもないとわかってもらえただろうか。
「僕のも」
 住之江がうれしそうに答案用紙を持ってきた。
「……住之江くんは同じ解き方を全問に使おうとしたね。もうちょっと問題をよく読まないとな。文章題は全滅か……」
「烏丸。何考えとんや」
「葺合くんと住之江くんの成績が上がれば、僕ひとりよりずっと効果的だ。千林に一泡吹かせてやれ」
「……」
「……あの程度のやつに見下されて黙ってることないんだよ」
「……簡単に言うな……」
 葺合は口をへの字にまげて横を向いてしまった。殴り倒されなかっただけめっけものかもしれない。
「いやならいいよ。僕ひとりでも……」
「誰がいやや言うた!」
 いきなりそばで大声を出されて、住之江がひくっと身を震わせた。
 僕はその肩をおさえて微笑んだ。
「怖がらなくていいよ。きみを怒鳴りつけたんじゃないからさ。じゃあ、今からこの先の予定について説明するよ……」


2003/06/14 Sat.

 数週間前の住之江そっくりに、僕は旧校舎前の草むらをうろうろ歩きまわっていた。
 葺合、住之江とあと二、三名の生徒が旧校舎一階の学習指導室に呼び出されていた。安土先生が到着したのは一時過ぎ。もうすぐ三時になるというのに、部屋からはまだ誰も出てこない。
 そもそも公立中学校の一年生に追試を課すなんて発想がどうかしてるのだ。他の教科はおろか、安土先生以外の数学教師だって、こんなことしちゃいない。
 しびれを切らしてトイレにでも行ってこようかと考えはじめたところで、生徒たちがばらばらと旧校舎から退出してきた。
 葺合はすぐに僕をみつけて群れを離れた。住之江の姿は見あたらない。
 目配せされて、そのまま青池へ脱出した。
 最近ますます色濃い緑色になってきた水のほとりで、葺合は背伸びをし、軽いため息をついた。
「住之江はまだ開放されてへん。合格点に足りんかったゆうてな」
「じゃあ、葺合くんは……」
 ポケットにはいっていた小さく畳んだ紙が僕に手渡された。
「……すごいな。計算間違いがなくなった」
「わけのわからん問題もようさんあったけど」
「九九を覚え直しただけでも成果はでてるよ」
 この十日間、朝刊配達がすんでから登校までの1時間はこの場所がかけ算教室になっていた。
 今さら小学校低学年の算数を同級生に学ぶなんて屈辱だったと思う。葺合はよく辛抱してくれた。
 期末考査の範囲は一次方程式までだから、この調子で四則演算をおさえられればなんとか間に合うはずだ。それは明るい材料だが。
「住之江くんのほうはあんまり助けてあげられなかったんだな……」
 放課後の教室では住之江が塾に行くまでの時間、授業の復習につきあってきた。実はこちらのほうが難物だった。彼に新しい解法をひとつ教えると、その前に覚えていた方法を使わなくなってしまうのだ。学習塾と教室で教え方がちょっと違っただけでも混乱してしまう。いっそ塾なんかやめてほしいとさえ思った。
「僕、戻って住之江くんを待つよ」
 もうすぐ配達所の仕事が始まる時間だ。葺合と別れてひとり学校へ引き返した。
 フェンスをくぐって草むらから首を伸ばしてみると、住之江が安土先生と並んで職員室に向かうところだった。
 ふたたび身を潜めて二人が見えなくなるのを待ち、今度はちゃんと正門から下校した。

 家に帰ると、母さんと勇が台所でおしゃべりに花を咲かせていた。
「サクランボいただいたんよ。山形産。すぐに食べる?」
「……今は、いい」
「月曜日のお弁当までは残ってないよぉ」
 勇が口から飛ばした種が、ゴミ箱を5センチほどはずれて落ちた。
 僕は種をまたいで二階にあがった。
 自室にはいり、金魚に餌をやってから問題集をひらいた。

 クワガタ採集の日のごたごたについて、母さんからは「お友達のおうちの都合も考えなあかんよ」と言われただけだった。
 そのあと住之江に聞いたら、
「烏丸くんは優秀だから、お友達にしていいってママが言ってた」
 けろっとして応えてくれた。
 葺合とのつきあいについて「ママ」がなんと言ったかは怖くて聞けなかったが、本人はあまり深く考えてはいないようだった。
 たいしたお咎めがなくとも自重するにこしたことはない。
 僕は先週末の誕生祝いを辞退した。そろそろ家族パーティーも気恥ずかしくなってきていたのでいい機会だった。
 ご馳走を食べ損ねたと言って不満たらたらの妹をなだめるために、母さんは妥協案としてバースデーケーキだけ焼いてくれた。
「いつの間に甘いもんが嫌いになってもたんかしらねえ」
などと言いながら、どっさりとクリームを載せて。

 僕はその後も自主的に午後五時帰宅を心掛けてきた。
 寝るまでの時間は自分の勉強にあてている。
 やるべきことは把握しているつもりだったが、一番の不安材料は自分の睡眠不足と体力だということもうすうす感じていた。


2003/06/16 Mon.

 理科の実験で千林と同じ班になった。残りの班員がおとなしめだったこともあって、千林がひとり場を仕切って指示をとばした。僕は完全に無視されて何の役割ももらえなかった。
 さぼりだと思われてもつまらないので、黙々とテーブルの雑巾がけや器具の洗浄やゴミ集めをしながら様子をみた。
 実験はうちの班が一番順調に進んでいたが、事細かに口をはさまれる生徒たちはいささかうんざりしているようだ。
 もともと神経質な千林が、最近はとみにぴりぴりとしたオーラを発している。文句など言おうものなら十倍になって返ってくると知っているので、敢えて逆らおうするやつもいない。
 住之江も自分の班でおみそにされているらしく、僕の班と葺合の班のあいだをふらふらと行き来していた。最後には窓辺に突っ立ってぼーっと外をながめていたが、誰も声をかけはしなかった。
 葺合の班では御影がリーダー格で、各メンバー平等に仕事を割り振っていた。千林と違って他の班員が聞いてこない限りは指図もしない。足を組んで椅子に腰掛けたまま、映画監督のように悠々と実験を見守っている。
 葺合は黙って自分の分担をこなしていた。作業の進め方について御影の顔色をうかがわなかったのは彼ひとりだと、他の班員は気づいていただろうか。
 高井田と門真は最後まで作業に加わらず、実験室の隅にすわりこんでふざけあっていた。

らす・きあ蛇足話その18 スリングショット

 いわゆるパチンコ。少年マンガの世界では昔からおなじみの手軽な飛び道具であります。たいへん原始的な武器に見えますが、「ゴム」という素材が発明されてこその思いつきなのですから、意外と歴史は浅いようですね。(ダビデ少年がゴリアテに向けた「投石器」は遠心力を利用するタイプ。こちらのほうがずっと古くて破壊力もあります。)
 小説のなかではゴルフボールを飛ばしておりますが、現実世界でこのようなことはまずできません。弾の質量が大きいほど強力なゴムを引き延ばす必要があり、その時に台座をささえるだけの腕力が必要なのですから、へたれな千林の手に負えるはずがないですね。空気抵抗も大きいから、相手に届く前にぽてんと落ちてしまいそう。弾はせいぜいパチンコ玉くらいの大きさのほうが実用的でしょう。
 ストーリーの展開上、わかってて嘘をつくこともあります。現実とお話の中の「もっともらしさ」の兼ね合いについてはいろいろ考えるところですが、「ラス・キア」にかぎっていえば、けっこうマンガチックな誇張路線寄りに設定しています。

あけましておめでとうございます

おかげさまで「ムシが好きで悪いか」も二度目のお正月を迎えることができました。
自転車操業の週1連載をなんとか継続できているのも、ひとえに読者のみなさまのおかげです。
不出来な息子達でありますが、これからも暖かく見守ってやってください。

Raskeir2010

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